ほんとうの幸せ
今日わが家の本棚からご紹介するのは、
『アルジャーノンに花束を』(著者/ダニエル・キイス 訳者/小尾 芙佐 株式会社早川書房)
ものすごく久しぶりに読んでみて、納得しつつ少しだけむなしくなりました。
幼児の知能のまま大きくなった32歳のチャーリィ・ゴードンが主人公。
彼を馬鹿にするひともいたけれど、もちろん優しいひとたちもいて、彼本来の明るい性分でくじけずに生きていたチャーリィ。あるとき先鋭的な脳の手術を受けたチャーリィは「超知能」を手に入れて天才になる。
もしも世の中に「普通」という基準があるのだとしたら、今までわからなかったこと、知らなかったことをすべて「普通以上」に知ることになるチャーリィ。
同じ脳の手術を受けた白ネズミのアルジャーノンも驚異的な知能を発揮し、教授たちはこの手術がもたらす輝かしい成果に驚嘆する。
が、しかしあるときアルジャーノンに思いがけない変化が・・・
すべてのひとに「知る権利」「生きる権利」は平等だとシンプルに思っていました。
どんな真実であろうと知らないよりも知っていたほうがいいに決まっているって。
そんな自分の足元がグラグラとするような物語です。
天才になったチャーリィを「前よりも幸せになった」という教授たち。でもチャーリィは言います。「ぼくはうまれたときからにんげんだった」と。
冒頭に古代ギリシャの哲学者プラトンの「国家」言葉が引用されています。
「その人の魂がより明るい生活から暗い生活へ入り、それで暗さに慣れていないゆえに見えないのか、あるいは暗闇から白日のもとへもどったので、あまりの明るさのために目がくらんでいるのか」
どちらが明るくて、どちらが暗いのか。それを決める権利は本人以外のだれにもないから。
すべてを理解したうえで、「人間的な愛情の裏打ちのない知能や教育なんてなんの値打ちもない」と語るチャーリィ。天才になればいままでよりも、まわりの人たちと仲良くなれると心の底から信じていたチャーリィ・・・
文章の書き方でチャーリィの現在を知ることができる物語なので、いつか原文で読んでみたいなあ、なんてちょこっと思いました。
最近またいろんな本を開いてみるようになったこの頃。タイミングよくもらったこの栞が大活躍しそうです♪
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